杉並区のワンルーム条例はどんな内容?

多くの自治体では「ワンルーム条例」なるものが制定されており、
ワンルームマンションの建設が規制されています。

ではワンルーム条例とはどういったものなのか、マンション経営にワンルーム条例が
どういう影響を与えるかなど杉並区を中心に詳しく見ていきましょう。

杉並区にはワンルーム条例は無い?

ワンルームマンションの建設を規制する「ワンルーム条例」ですが、
杉並区にはありません。

杉並区では「建築物の建設に係る住環境への配慮等に関する指導要綱」で
ワンルームマンションの建設に一定の歯止めをかけています。

条例は自治体が制定する法律のようなもので、
強い法的拘束力を持っていて条例に違反すると罰則を受けることもあります。

指導要綱は行政指導の内容を定めたもので、条例よりも法的拘束力が一段弱く、
指導要綱に違反しても受けるのは行政指導だけです。

行政指導に従う法的拘束力も無く、
行政指導を受けたことを是正しなくても罰金など刑事罰を受けることはありません。

指導要綱は守らなくても良い?

法的拘束力の弱い指導要綱ですが、守らなくても良いわけではありません。

指導要綱に刑事罰は設けられていない上に、
違反して行政指導を受けても企業名などが公表されることもほとんどありません。

行政指導のやり方は行政手続法という法律で厳しく制限されており、
企業や個人が不利益を受ける形での行政指導はできないようになっています。

法律や条例に抵触している場合は別として、行政指導を受けたことを公表された
企業や個人は何らかの社会的制裁を受ける可能性が高いです。

社会的制裁を受けると経済的な損失が発生、これが不利益を被ることに該当するので
行政指導を受けた企業や個人の名前を公表できないわけです。

刑事罰を受けることも無ければ行政指導に従う必要も無い、行政指導に従わなくて
名前が公表されないとなると指導要綱に従う必要は無いと思ってしまいます。

指導要綱にも行政指導にも従わないとなると自治体に目を付けられてしまいます。

不動産業者なら、次にワンルームマンションを建てようとする時に
すんなりとは許可が下りないことも考えられるのです。

決して自治体の嫌がらせではなく、「また指導要綱に従っていないのでは」と慎重に
チェックされるから許可が下りるまでに時間がかかってしまうわけです。

建設以外の部分でも自治体の目が厳しくなりますから、
指導要綱や行政指導に従わなくて良いことはありません。

杉並区のワンルーム指導要綱の内容

杉並区の「建築物の建設に係る住環境への配慮等に関する指導要綱」は、
一戸当たりの専有面積が40㎡未満の集合住宅が対象となります。

階数は3階以上(居室の無い地階は除く)で、
住戸数20戸以上もしくはワンルーム住戸6戸以上が必要です。

一戸当たりの最低面積は25㎡以上、
総戸数が10戸未満の集合住宅では20㎡以上なければいけません。

専有面積が40㎡以上のファミリー形式住戸の設置が必須で、住戸数が20を超える
集合住宅だと超える分の半分はファミリー形式住戸にする必要があります。

例えば総戸数30戸のワンルームマンションであれば、
5戸はファミリー形式住戸にしないといけないということです。

ファミリー形式住戸以外にも
 ・環境空地
 ・駐輪場
 ・駐車場
 ・管理人室
の設置が必要、
 ・防災備蓄倉庫等
 ・ごみ保管施設等
 ・バリアフリー住戸
の設置は努力義務となります。

上記は概要で、実際の「建築物の建設に係る住環境への配慮等に関する指導要綱」
にはより細かい規定がたくさん盛り込まれています。

詳しくは杉並区公式サイトにある「建築物の建設に係る住環境への配慮等に関する
指導要綱」のページで確認してください。

ワンルームマンションに設置すべき施設

杉並区の指導要綱では、ファミリー形式住戸に加えて
 ・環境空地
 ・駐輪場
 ・駐車場
 ・管理人室
の設置がワンルームマンションには必要です。

「環境空地」は簡単に言うと歩道のことで、集合住宅の敷地面積によって
 ・1000㎡未満 幅員1m以上
 ・1000㎡以上3000㎡未満 幅員1.5m以上
 ・3000㎡以上 幅員2m以上
と設置すべき歩道の幅が決まっています。

「駐輪場」はワンルーム住戸数+ファミリー形式住戸数の1.5倍の台数の自転車が
停められるようにしておかないといけません。
(端数は切り捨て)

例えば総戸数32戸でワンルームが26戸、ファミリー形式が6戸だとすると、
26+9で35台分の駐輪スペースが必要です。

自転車駐輪場とは別にバイク置き場も必要で、
バイク置き場は総戸数の10%の台数が停められればOKです。

「駐車場」は住人用としてファミリー形式住戸の20%以上の台数分、外来用として
29戸以下は1台分以上、30戸以上は2台分以上の確保が必要となります。

ただし集合住宅の敷地内で確保するのが難しい場合は、
別途駐車スペースを確保しても構いません。

「管理人室」は10㎡以上広さが求められますが、所有者が管理人かつ集合住宅に
居住する場合は10㎡以下でも設置しなくてもOKです。

ワンルームマンションだけが規制対象ではない

杉並区の「建築物の建設に係る住環境への配慮等に関する指導要綱」は
ワンルームマンションのみを対象としたものではありません。

東京都内の区市で制定されているいわゆるワンルーム条例や指導要綱も
ワンルームマンションだけが対象ではないのです。

上記の内容の部分でも触れていますが、杉並区では
「一戸当たりの専有面積が40㎡」の集合住宅が指導要綱の対象となっています。

住戸形式が1Kや1DK、2DKでも一戸当たりの専有面積が40㎡未満なら
「建築物の建設に係る住環境への配慮等に関する指導要綱」の対象となります。

いわゆるワンルーム条例や指導要綱はワンルームマンションを規制する目的ではなく、
「単身者向け住宅」を規制する目的で作られているのです。

1Kや1DK、2DKといったように複数の部屋があっても、
面積が40㎡未満なら単身者向けと見なされて規制の対象となるわけです。

ワンルーム条例を制定する目的

ワンルームマンションを提供する側や利用する側は、
条例や指導要綱でワンルームマンションを規制する目的がよく分かりません。

自治体が条例や指導要綱でワンルームマンションを規制するのには
1つに「単身世帯の増加を防ぐ」という目的があります。

ワンルームのような占有面積の小さい集合住宅を利用するのは単身者で、
ワンルームマンションが増えるとその地域には単身世帯が増えることになります。

単身世帯は家族世帯に比べると引っ越しの頻度が多く、
その地域に長く留まってくれない可能性が高いのです。

長く留まらない単身世帯は、
清掃や子供や高齢者の見守りなどの地域活動に積極的に参加してくれません。

地域活動が停滞すると住民同士の繋がりが希薄となって、
災害などが発生した時に支障をきたす恐れがあります。

単身世帯は短期間で引っ越すことも可能なため、
マナー違反など周辺住民とトラブルを起こすケースも少なくありません。

夜遅くに大音量で音楽をかける、大声で話す、ごみ出しのルールを守らない、
自転車やバイクを指定の場所に停めないなどなど。

通常はトラブルを避けるためにマナーやルールを守りますが、身軽で引っ越しに手間が
かからない単身世帯はマナーをルールを守らないことが往々にしてあるのです。

地域活動を停滞させて無用なトラブルを引き起こす種となる単身世帯が特定の地域で
増えるのを防ぐために条例や指導要綱でワンルームマンションを規制するわけです。

税収面の問題

自治体にとっては「税収面の問題」の方が、
条例や指導要綱でワンルームマンションを規制する意味合いが大きいかもしれません。

自治体の大きな財源の1つが「住民税」です。

特に2008年の財源移譲で所得税の一部が住民税に移し替えられたことで、
自治体の税収における住民税の割合が大きくなっています。

単身世帯はその地域に長く留まらないので、
単身世帯が増えても自治体にとっては安定した税収が見込めません。

単身世帯は引っ越しのたびに住民票を移すことをせずに、場合によっては
実家のある自治体に住民票を残したままというケースも少なくありません。

住民税は住民票がある自治体に収めるため、
住民票を移さない単身世帯が増えても税収増には繋がらないのです。

家族世帯はその地域に長く留まる可能性が高い上に、補助金や行政サービスを
利用するのに住民票を移すケースがほとんどとなっています。

自治体にとっては家族世帯が増えた方が税収が増えて安定するので、
条例や指導要綱で規制して単身世帯が増えないようにしているわけです。

ワンルーム条例がマンション経営に与える影響

ワンルームマンションの建設を規制する条例や指導要綱は、
マンション経営にプラス・マイナス両方の影響を与える可能性があります。

プラスの影響として挙げられるのは「部屋が埋まりやすい」ことです。

いわゆるワンルーム条例によって杉並区を始めとした東京の市区では
新たにワンルームマンションを建てることが難しくなります。

しかしワンルームマンションの需要自体は減りませんから、需要はそのままで
供給が減るため既存のワンルームマンションの部屋が埋まりやすくなるわけです。

マイナスの影響としては、供給が減ることで既存のワンルームマンションの価値が
高まって「家賃が高騰する」ことが挙げられます。

家賃が高くなるとより設備の整ったマンションに人気が集まり、
設備が整っていないマンションは人気が下がります。

同じような家賃でも設備が整っているかどうかで人気が二極化してしまう恐れが
あるのです。

自分の持っているマンションの人気が上がれば良いですが、
上がらないとマンション経営がかなり苦しくなることが予想されます。

まとめ

杉並区にはいわゆるワンルーム条例は無く、
ワンルームマンションの建設を規制する指導要綱があるだけです。

法的拘束力が弱いとは言え守らないといけないルールですから、
マンション経営を考えているなら事前に確認しておかないといけません。

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