遺産分割協議書なしで故人の預金を引き出す方法とは?

遺言書の無い相続手続きには「遺産分割協議書」が必要で、故人の預金を
引き出すために遺産分割協議書の作成を進めている人も少なくないはずです。

では遺産分割協議書なしだと故人の預金を引き出すことはできないのか、
全ての相続手続きに遺産分割協議書が必要なのかなどを詳しく見ていきましょう。

遺産分割協議書なしでも故人の預金引き出しは可能

親や祖父母など近しい親族が亡くなり、故人が所有していた金融機関口座から
預金を引き出すのには遺産分割協議書は特に必要ありません。

例えば大手金融機関である「三井住友銀行」のホームページには、
遺産分割協議書なしの場合の手続き方法が掲載されています。
(参照:https://www.smbc.co.jp/kojin/souzoku/tetsuzuki/case04.html)

三井住友銀行を含めた大手銀行はもちろん地方銀行や信用金庫、信用組合など、
どの金融機関でも基本的には遺産分割協議書なしで故人の預金が引き出せます。

ただし遺産分割協議書なしでは故人の預金が引き出せない金融機関もあるので、
手続きの際は事前に確認してください。

故人の預金の引き出しは各金融機関の判断によって手続き内容が決まり、
多くの金融機関が遺産分割協議書は必要ないと判断しているということです。

遺産分割協議書なしで故人の預金を引き出すには

遺産分割協議書なしで故人の預金を引き出すには
 ・故人の戸籍謄本(原本)
 ・相続人全員の戸籍抄本もしくは戸籍謄本(原本)
 ・相続人全員の印鑑証明書(原本)
 ・手続きする人の実印
 ・金融機関所定の書類
 ・故人の通帳、証書、キャッシュカード
といったものが必要となります。

故人の戸籍謄本、相続人全員の戸籍抄本・戸籍謄本・印鑑証明書は原本が必要で、
コピーでは手続きできません。

故人の戸籍謄本は生まれてから亡くなるまでのものが必要で、
本籍地を変更している場合は変更前の本籍地まで戸籍を取得しないといけません。

例えば生まれた時の本籍地は東京で、就職して大阪、結婚して京都など
複数回変更している場合は全ての土地で戸籍謄本の取得が必要です。

戸籍謄本や戸籍抄本、印鑑証明書は、
いずれも少なくとも取得して半年から1年以内のものでないと無効となります。

有効期限はないものの、相続手続きには最新情報が必要なので、取得から
できるだけ期間が経過していない戸籍謄本などでないといけないというわけです。

故人の通帳、証書、キャッシュカードは必須ではなく、
紛失などで手元に無くても手続きはできます。

遺産分割協議書があっても手続きに必要なものは変わらない

遺産分割協議書があっても、
上記の故人の預金引き出しに必要な書類などが変わることはありません。

遺産分割協議書を提出しないといけないので、
必要書類が増えるだけで手続きが簡素になるわけでもないのです。

もし遺産分割協議書を作成していても、
金融機関に遺産分割協議書なしと伝えれば特に提出は求められません。

故人の預金引き出しで必要書類が減ったり手続きが簡素化されるなら、
手間をかけても遺産分割協議書を作成する意義があります。

しかし実際は必要書類が増えるだけなので、
故人の預金引き出しのためだけに遺産分割協議書を作成することに意味は無いです。

相続内容を詳細に記した遺言書がある場合も同じで、
特に故人の預金引き出しが簡素化されることはありません。

自筆証書遺言や秘密証書遺言だと家庭裁判所の検認調書や検認済証明書が
必要となり、やはり手間と必要書類が増えるだけです。
(公正証書遺言は検認不要)

法定相続でないなら遺産分割協議書を作っておいた方が良い

故人の預金引き出し手続きに遺産分割協議書は不要ですが、
法定相続を行わない場合は遺産分割協議書を作っておいた方が良いでしょう。

法定相続は、民法で定められた目安に則って遺産を分割・相続することです。

例えば相続人が配偶者と子供2人の場合は、配偶者が相続遺産総額の1/2、
子供は残り1/2を人数で均等に分けるので1/4ずつとなります。

法定相続以外の方法で相続する場合は、
故人の預金を引き出した後に相続人間で揉める恐れがあります。

最悪の場合は裁判に発展することにもなりかねないので、
事前に遺産分割協議書を作成して相続割合を決めておいた方が良いのです。

「とりあえず引き出してから考えよう」ではなく、
「相続割合を決めてから引き出す」方が揉める可能性は低くなります。

未然にトラブルを防ぐなら遺産分割協議書を作成しておく

相続の時点では揉めていなくても、
後々になって相続のことで揉めるといったことが少なくありません。

後々になってから揉めるのがイヤなのであれば、故人の預金引き出し手続きに
不要でも遺産分割協議書を作っておいた方が良いでしょう。

口約束だと後で気が変わって、「そんなこと言っていない」
「そういう意味で言っていない」などと言い出す相続人が出てこないとも限りません。

遺産分割協議書という形で話し合って合意した内容を残しておくことで、
後で気が変わる相続人が出てきてもトラブルに発展することは防げます。

特に誰が何をどれだけ相続するかで揉めているのであれば、
絶対に遺産分割協議書は作っておきましょう。

故人の預金は分割して振り込むことはできない

複数の相続人で故人の預金を分ける場合でも、
基本的には故人の預金を複数の口座に分割して振り込むといったことはできません。

相続人の代表となる人の口座に全額が振り込まれて、
他の相続人の口座に振り分けるといった形になります。

以前は分割振り込みに対応してくれる金融機関もありましたし、
現在でも対応してくれる金融機関も無いことはありません。

ただ分割振り込みをしてくれる金融機関はかなり少数で、
多くの金融機関は代表者の口座に故人の預金を全額振り込む形になっています。

相続手続きに遺産分割協議書は不要?

遺産分割協議書なしでも故人の預金が引き出せるなら、
相続手続きに遺産分割協議書は要らないと思うかもしれません。

故人の預金引き出しと相続人が1人しか居ない場合に不要なだけで、
遺産分割協議書が必要な相続手続きもあるのです。

例えば土地・建物など不動産を相続する場合には、
その手続きに遺産分割協議書が必要となります。

故人が所有していた不動産を相続する際には「相続登記」を行って不動産の名義を
変更するのですが、相続登記手続きの際に遺産分割協議書の提出を求められます。

絶対必要というわけではありませんが、
相続税の申告にも遺産分割協議書があった方が良いです。

「小規模宅地の特例」や「配偶者の税額軽減」などを利用して
相続税を軽減する場合には、遺産分割協議書の提出が必要です。

相続登記でも遺産分割協議書が不要なケースがある

不動産を相続登記する場合は基本的に遺産分割協議書が必要ですが、
遺産分割協議書なしでも相続登記が可能なケースもあります。

1つは不動産相続について詳細が記載されている遺言書がある場合、
もう1つは法定相続分に従って不動産を相続する場合です。

遺言書がある場合はどんな相続手続きにも遺産分割協議書は必要ありませんし、
法定相続分に従う場合も遺産分割協議書は不要です。

例えば相続人が子供2人で相続遺産が現預金1千万と評価額1千万円の不動産、
1人が現預金、もう1人が不動産を相続するとします。

相続人が子供2人だと法定相続分は1/2ずつで、ともに法定相続分に相当する
1千万円分を相続するので遺産分割協議書は要らないわけです。

また不動産を相続人全員で共有する場合も、
相続登記に遺産分割協議書は必要ありません。

まとめ

遺産分割協議書なしでも故人の預金引き出しは可能です。

ただし相続遺産に不動産が含まれる場合や相続税の申告では、
遺産分割協議書の提出が求められることもあります。

後々に発生する恐れがあるトラブルを予防することもできるので、
必要無くても遺産分割協議書は作成しておいた方が良いかもしれません。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次